百合ヶ丘駅は「ヶ」、町は「丘」 団地と同じ1960年にできた駅

最終確認日
百合ヶ丘駅の住所には、「ヶ」がありません。
小田急電鉄の駅案内には「川崎市麻生区百合丘1-21-1」とあります。駅の名前は百合ヶ丘、住所の町名は百合丘。毎日使っている人でも、気づいていないことが多い小さな違いです。
この記事は、そのなぞから始めます。駅のまわりを、名前、団地、バス、学校の順に、公開されている資料だけで歩きます。私たちは、まだ現地に行っていません。書いてあるのは、資料から読み取れたことだけです。
犬駅の名前と町の名前、字がちがうの?
猫そうなの。理由は資料に書かれていないけれど、町の名前の由来は、ちゃんと書いてあるのよ。
駅は「ヶ」、町は「丘」。どうして?
駅名に「ヶ」を使い、町名に「丘」だけを使う理由は、確認できませんでした。市の資料にも、小田急の資料にも、書かれていません。
分かるのは、並べたときの事実です。
- 駅名:百合ヶ丘(小田急電鉄の駅案内)
- 駅の住所:川崎市麻生区百合丘1-21-1(同じ駅案内)
- 町名:百合丘1〜3丁目(川崎市の町名一覧)
「百合丘」という名前は、どこから来たの?
川崎市の委託調査の報告書(日本地名研究所、2018年)は、3つの理由をあげています。
- 百人あまりの地主の協力宅地開発に、百人あまりの地主などが力を合わせた
- 弘法の松のまわりの山百合弘法の松の周辺に、山百合が自生していた
- 神奈川県の花山百合が、神奈川県の花であること
報告書は、この3つから考えられた町名と「言われています」と書いています。決まった1つの理由ではなく、重なった理由で、言い伝えの形の説明です。
ここで出てくる「弘法の松」は、百合丘2丁目にあります。伝説は、こうです。
弘法大師が各地をめぐったとき、この土地に百の谷があれば寺を建てようと考えました。数えると、谷はひとつ足りません。そこで、寺をあきらめて、松を植えたそうです。いまある松は、二代目です(報告書)。
谷と松の木がとても多かった土地にふさわしい話だ、と報告書は書いています。
バスの停留所にも「弘法の松」の名前が残っています。バスの章で、もう一度出てきます。
もうひとつ、へえ、と思う話があります。昭和のはじめ、いまの百合丘3丁目19番と万福寺の境のあたりで、約100万年前のものと推定されるパラステゴドンという象の歯の化石が見つかり、1973年(昭和48年)に市の天然記念物になりました(報告書)。約100万年前の動物の歯が、百合丘の土から出てきた、ということです。
団地ができて、駅ができた。順番は?
同じ年です。
報告書によると、日本住宅公団が高石の南の西側を大きく造成して、1960年(昭和35年)に百合ヶ丘団地ができました。団地は「都市型団地」として全国から注目され、これを受けて、小田急線が新しい駅を開きました。それが百合ヶ丘駅です。団地ができた年の3月に開設されたと、報告書にあります。麻生区役所のあゆみの年表にも、1960年「百合ケ丘駅開設」とあります。
麻生区ができたのは1982年。百合ヶ丘駅は、区より22年先輩です。
団地のできたあと、駅のまわりにお店やスーパーが進み、にぎやかな商店街ができた、と報告書は書いています。
麻生区には、区制40周年の事業で集めた「麻生区写真アーカイブ」があります。1960年ごろの建設中の駅前商店街、1960年の「百合ヶ丘駅開設直後」の写真、1965年ごろの百合丘小学校の第1回運動会などが載っています。区の写真は、使うのに申込みが必要(営利目的は不可)なので、この記事には載せません。見たい人は、出典の区のページへどうぞ。
団地は、その後、建て替えが進みました。川崎市の環境影響評価の資料(2002年〜2005年)に、「(仮称)百合ヶ丘第二団地建替計画」があります。
- 場所:百合丘3丁目12番ほか。区域の面積は約4.2ヘクタール
- 計画:5〜10階建ての共同住宅(2003年の評価書では15棟・609戸、2005年の報告書では14棟・600戸と、数字が変わっています)
- 工事:2003年10月に着手予定、2009年5月完了予定(予定です。実際に完了した日は、確認できませんでした)
区の写真アーカイブには、「百合ヶ丘第二団地(現百合ヶ丘みずき街)」という名前も出てきます。いまの名前は、そこから分かります。
駅のとなりの高石は、どんな町?
駅の北側に広がるのは、高石です。団地ができる前、このあたりは「高石村」でした。
報告書によると、高石は小田急線と世田谷町田線の北側と、南側の東の半分にあり、南側の西の半分が百合丘です。1889年(明治22年)から生田村の字になり、1938年(昭和13年)に川崎市に入りました。小田急線が1929年(昭和4年)に開通したあとも、最寄りは西生田駅(いまのよみうりランド前駅)で、村の中心は東側にあった、と報告書は書いています。住宅が増えたのは、昭和30年代に始まった百合丘地区の開発がきっかけだった、と報告書は書いています。
高石の地名の由来は、「よくわからない」と報告書にあります。五反田川などの低地から見て、まわりが高いからではないか、という推測が書いてあります。
高石には、歴史のある場所が3つ。
- 高石神社:高石1丁目の高台。1654年(承応3年)に領主の加々美金右衛門が建てた。まわりの森は「お伊勢の森」と呼ばれる(報告書)
- 法雲寺・潮音寺:高石の発祥の地とみられる本村にある(報告書)
- 細王舎:1889年(明治22年)に、座繰機から始まった工場。農機具で有名になり、最盛期に約300人が働いた。名前は、初代夫妻の出身地、細山と王禅寺から1字ずつ取ったと言われる(報告書)
高石神社の流鏑馬は、市の「伝統行事」のページで、毎年1月8日に行われる新年の行事として紹介されています(2009年の掲載)。報告書は1月15日と書いていて、日が合いません。今年の日は、確認できませんでした。
駅からのバスは、どこへ行くの?
駅の案内ページによると、バスは、小田急バスと神奈川中央交通の2社です。バスのりばのマークも、駅の構内図にあります。ただし、のりば番号と、神奈川中央交通の系統は、確認できませんでした。
小田急バスの新百合ヶ丘営業所の運行系統図(2026年4月1日現在)には、百合ヶ丘駅から出る「百02」があります。凡例には、新百合ヶ丘駅発の系統として、「百02 百合ヶ丘駅」と書かれています。図から読み取れた、駅側の停留所の順は、こうです。
停留所の名前に、団地と松の名前がそのまま出てきます。管理事務所前、第三団地前、弘法の松、百合ヶ丘三丁目。団地の町と、伝説の松のある町が、バスの路線でつながっています。
団地坂上の停留所は、小田急の「ODAKYU VOICE」(2023年10月)にも出てきます。王禅寺見晴し公園(王禅寺西2-6-9)へは、駅から徒歩約20分、または小田急バスで「団地坂上」で降りて徒歩約1分、と書かれています。天気がよい日は富士山まで見渡せる、小さな公園だそうです。
系統図の画像は、停留所の途中の全部までは読み取れませんでした。行き先と時刻は、小田急バスの案内で確認してください。
学校は、どこ?
百合丘は、1つの町に、2つの小学校と2つの中学校の学区があります。川崎市の町丁名順一覧によると、こうです。
- 百合丘1・2丁目小学校は百合丘小学校、中学校は西生田中学校
- 百合丘3丁目小学校は南百合丘小学校、中学校は長沢中学校
- 東百合丘1〜4丁目小学校は長沢小学校(4丁目の一部は南百合丘小学校)、中学校は長沢中学校
- 高石1〜3丁目小学校は西生田小学校、中学校は西生田中学校
高石4丁目は百合丘小学校、高石5丁目は番地で百合丘小・南百合丘小に分かれる
学区の資料は、市のページの更新が2017年11月です。古いので、引っ越しの前に、市や学校に確認してください。百合丘小学校の令和7年度の案内にある学区は、百合丘1・2丁目、高石4丁目などで、上の一覧と同じです。
百合丘小学校は、百合丘2丁目にあります。正門は線路側、さくら門はバス通り側だそうです(入学案内)。区の写真アーカイブに、1964年ごろの建設中の校舎と、1965年ごろの第1回運動会の写真があります。駅ができて数年後に、町に学校が建ったことが読み取れます。
駅のまわりに、何がある?
ここは、資料で確かめられたものだけを並べます。
- 弘法の松(百合丘2丁目):バス停の名前にもなっている。「弘法松公園」は百合丘2-10(川崎市の測定局のページ)
- 麻生消防署 百合丘出張所(百合丘1-18-4):駅から徒歩約2分。昭和38年(1963年)5月に開設(川崎市)
- 高石神社(高石1丁目):高台にある神社
- 王禅寺見晴し公園(王禅寺西2-6-9):駅から徒歩約20分、またはバス
駅の中には、薬局、コンビニ、飲食店、銀行のATMなどがあります(小田急の駅案内)。お店の時間は、変わることがあるので、駅の案内で確認してください。
百合ヶ丘の歴史を、年表で見ると?
- 1654年(承応3年)高石神社が建てられる
日本地名研究所の報告書(2018年) - 1889年(明治22年)高石が、生田村の字になる。1938年に川崎市へ入る
同じ報告書 - 1960年3月百合ヶ丘駅が開設される。この年、百合ヶ丘団地もできる
報告書、麻生区役所のあゆみ - 1963年5月麻生消防署百合丘出張所が開設される
川崎市「百合丘出張所」のページ - 1982年麻生区ができる。東百合丘が、住居表示で生まれる(7月1日)
麻生区役所のあゆみ、川崎市「区別町名一覧表」 - 1984年高石の住居表示が実施される
報告書 - 2002年〜2005年百合ヶ丘第二団地の建て替えの環境影響評価の手続きが進む
川崎市の公告・お知らせ(2002年10月15日、2003年9月17日、2005年5月26日) - 2021年3月百合ヶ丘駅周辺のバリアフリー整備の実施状況が、図にまとめられる(令和3年3月時点)
川崎市「百合ヶ丘駅周辺地区バリアフリー推進構想」の実施状況図
駅の歴史は、団地とともに歩いてきた、60年あまりです。
駅の数字は、1か所だけ
統計は、ここだけにします。小田急電鉄の公表では、百合ヶ丘駅の1日平均の乗り降り(乗降人員)は、2025年度が21,003人。小田急の70駅のなかで46位です。
2019年度は21,681人、2020年度は17,214人でした(ODAKYU HANDBOOK 2021)。2025年度は、2019年度より約3%少ない数字です。麻生区の7駅を並べた記事は、麻生区の7つの駅を並べてみたにあります。標高の話は、7駅の標高差(百合ヶ丘駅は約78m)へ。
1年のなかで、いつ行けばいい?
確かめられた日だけを書きます。
- 1月 高石神社の流鏑馬市のページでは1月8日。報告書は1月15日と書く
日付が資料でちがうので、行く前に確認してください。今年の日は、確認できませんでした - 年間 弘法の松のまわりを歩く百合丘2丁目。バスの「弘法の松」で降りられる(小田急バスの系統図)
行事ではなく、散歩の目印として
団地や町内の祭り、夏祭りの日程は、公式の資料では確認できませんでした。
3問クイズ 百合ヶ丘駅、わかる?
Q1 百合ヶ丘駅の住所の町名は?
百合丘です(百合丘1-21-1)。駅名のような「ヶ」はありません。
Q2 百合ヶ丘駅ができたのは、団地よりも前? あと?
同じ1960年です。団地ができた年の3月に、駅が開設されました(報告書)。
Q3 弘法大師は、谷がいくつあったら寺を建てようと考えた?
百です。ひとつ足りなかったので、松を植えた、という伝説です。
よくある疑問、5つ
Q1 駅に人はいますか? 駅係員の配置時間は、7時35分から12時と、14時から20時までです。いない時間は、インターホンで案内します(小田急の駅案内)。
Q2 車いすで使うときは? 駅の案内には、車いす用のスロープ、階段昇降機、車いす対応型の個室トイレなどが書かれています。車いすや介助が必要な人は、来る前に登戸駅(044-911-2016。9時〜17時は小田急お客さまセンターに転送)に連絡してください、とあります。
Q3 ごみの収集日は? 百合丘は、普通ごみが火曜と金曜、プラスチック資源が月曜、ミックスペーパーが水曜、缶・びんなどが木曜です(川崎市「収集日一覧」、2026年4月1日更新)。粗大ごみ・小物金属は、第2・4回目の金曜です。
Q4 駅の近くの小学校は? 百合丘1・2丁目は百合丘小学校、百合丘3丁目は南百合丘小学校です。市の学区の資料は2017年の更新で古いので、確認が必要です。
Q5 バスは、どこから出ていますか? 駅の案内では、小田急バスと神奈川中央交通の乗り換えがあります。のりば番号と、神奈川中央交通の系統は、確認できませんでした。小田急バスの百02の停留所は、この記事の図のとおりです。
事実が2つあります。百合ヶ丘駅は、1960年に団地とそろってできた駅です。そして、町の名前は、百人あまりの地主の協力と、弘法の松の山百合などから考えられたと言われる、と報告書が書いていることです。
発見は、ひとつ。駅の名前、小学校の名前に「百合」が、バス停の名前に「弘法の松」が出てくること。団地とそろってできた駅の町は、名前でいまもつながっています。
次の一歩
次の休日に、バスで「弘法の松」まで行って、まわりを歩いてみてください。伝説の松が、どこにあるのか、探してみる。それだけで、駅の名前が少し身近になるはずです。
柿生駅のように、村が呼んだ駅の話は、柿生駅の記事へ。駅のまとめページは、百合ヶ丘駅の一覧です。
出典
- 小田急電鉄「百合ヶ丘駅のご案内」(住所、駅係員の配置時間、バス会社、設備、乗降人員。2026年10月3日に確認)
- 小田急電鉄「鉄道部門:駅別乗降人員・輸送人員ほか」(2025年度のデータ)
- 小田急電鉄「ODAKYU HANDBOOK 2021」46ページ(2019年度・2020年度の乗降人員)
- 小田急バス「路線図・運行系統図」と、新百合ヶ丘営業所の運行系統図(2026年4月1日現在)
- 川崎市委託事業報告「川崎市北部 多摩区・麻生区の町名の移り変わり」(日本地名研究所、2018年)(高石・百合丘・東百合丘の項)
- 川崎市麻生区「麻生区役所のあゆみ」
- 川崎市麻生区「麻生区写真アーカイブ」(2025年12月8日更新。写真の利用には申込みが必要で、営利目的は不可)
- 川崎市「(仮称)百合ヶ丘第二団地建替計画」環境影響評価のお知らせ:準備書(2002年10月15日)、評価書(2003年9月17日)、事後調査報告書(2005年5月26日)
- 川崎市「百合丘出張所」(麻生消防署)(2021年6月24日更新)
- 川崎市「伝統行事 -麻生区-」(2009年5月20日)
- 川崎市「区別町名一覧表(麻生区)」
- 川崎市「麻生測定局詳細」(弘法松公園の住所。2025年1月21日更新)
- 川崎市「収集日一覧(多摩区・麻生区)」(2026年4月1日更新)、麻生区の小学校 町丁名順一覧(2017年11月20日更新)、麻生区の中学校 町丁名順一覧
- 川崎市立百合丘小学校「令和7年度入学のご案内」
- 川崎市「百合ヶ丘駅周辺地区バリアフリー推進構想 特定経路等地図」、事業実施状況図(令和3年3月時点)
- 小田急電鉄「ODAKYU VOICE 沿線まちあるき vol.52 百合ヶ丘」(2023年10月1日。王禅寺見晴し公園)
- 写真:ウィキメディア・コモンズの「Odakyu Yurigaoka Station South Exit 201406.jpg」(Kounoichi/CC BY-SA 3.0)、ホーム(LERK/CC BY-SA 4.0)、駅名標(LERK/CC BY-SA 4.0)
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